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AVR-DA の内蔵プルアップ特性

AVR-DA シリーズのデータシートには、IO ポート内蔵のプルアップ抵抗の電気的特性はあまり詳しい記述がありません。代表特性として VDD=3V, VIN = 0V のとき 150uA(typ) 200uA (max) を保証しています。

また、VDD と Weak Pull-Up 電流のグラフ (Fig 38-82) が掲載されています。電流は VDD 電圧に依存するように書かれていますが、測定条件が明確ではありません。


– ここまで図表は AVR64DA28-32-48-64 DS Rev.B より引用

マイコンの内部回路によりますが、
1. PU 抵抗の形成に MOSFET を使っている場合
2. PU 抵抗のイネーブルを FET SW で切り替えている場合
などの条件では、抵抗値が非線形となることが考えられます。たとえば AT90S シリーズはかなり非線形な特性でした。

内蔵プルアップを積極的に使う応用を作るうえでこのあたりが気になったので、実測してみました。

VDD=2.5, 3.3, 5V で、プルアップに設定した PE2 ピンに対して VIN を0-5V, ±0.6mA 制限でスイープして、グラフにプロットした入力電流 Iin を青線で示しています。0<VIN<VDD の範囲でほぼ線形とみなすことができます。R=20kΩ の破線とよく一致します。
なお、VIN>VDD では寄生ダイオードが導通するので大きな逆電流が流れます。数十mA を超えると IC によってはラッチアップしてしまいます。

一応、ポートを変えて PD5, PF0 ピンでも同様に確認してみましたが、ほとんど同一の特性でした。常温では プルアップ抵抗 R_PU=20kΩとみなして問題なさそうです。

VIN = 0V の電流値は先ほど示した FIg.28-82 のグラフと一致します。しかし、FIg.28-82 から、パッシブな抵抗に比べて相当大きい温度係数 (~2000ppm/K = 0.2%/K) をもつことに注意が必要です。

シフトレジスタによるノイズジェネレータのフィードバックと周期

デジタル回路の簡単なノイズジェネレータとして、シフトレジスタを使ったいわゆる Shift Register Generator Counter が使われます。シフトレジスタの出力を XOR を通して入力にフィードバックすることで、長い周期のカウンタが得られます。カウンタ周期 N が大きいとき、シフトレジスタの出力は (入力周波数 / N) より高い周波数成分をもつホワイトノイズに近づくので、サウンドジェネレータのノイズ音発生器によく使われます。

2入力の XORを使ったフィードバック回路では、SREG 出力が 0x00 のとき入力も 0 になってしまうため、この状態を避ける必要があります。一般的にはリセット後の初期値を適当な値に設定します。

74164 などの SIPO シフトレジスタは、出力 0x00 にするリセット入力しかありません。出力が 0x00 を有効なステートとするためには、上図のように XNOR を使えば OK です。これは、出力 0xFF から XOR によるフィードバックで動作させたときと等価になります。

2入力 XNOR の入力元 bit の接続先を M,N として、得られるカウンタの周期を下表に示します。N bit のシフトレジスタのとりうる状態は 2^N で、全 bit が 1 のときは無効な状態なので、周期 2^N-1 が N bit SREG の最大周期となります。この最大周期となるカウンタを Maximum Length Counter と呼びます。Maximum Length Counter となるフィードバック接続は、表中で太字で示しています。

M
N/M 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
N 0
1 3
2 7 7
3 15 6 15
4 21 31 31 21
5 63 14 9 14 63
6 127 93 127 127 93 127
7 63 30 217 12 217 30 63
8 73 465 21 511 511 21 465 73
9 889 42 1023 62 15 62 1023 42 889
10 1533 2047 1953 1533 595 595 1533 1953 2047 1533
11 3255 126 45 28 819 18 819 28 45 126 3255
12 7905 1785 8001 7161 6141 7665 7665 6141 7161 8001 1785 7905
13 11811 254 5115 186 5461 254 21 254 5461 186 5115 254 11811
14 32767 4599 63 32767 35 93 32767 32767 93 35 32767 63 4599 32767
15 255 126 57337 60 16383 434 63457 24 63457 434 16383 60 57337 126 255

 

ラインフィルタで絶縁電源を作るテスト

デジットのセールでラインフィルタが 100個¥500 と激安なのでつい買ってしまいました。

ラインフィルタは SU10VF-05050 という型番で、
AC 入力回路のコモンモードフィルタを想定したものですが
要はトランスなので絶縁電源に応用できそうです。
電力は取り出せなくても、1個¥100 以内の絶縁電源でマイコンを動かすことができれば
いろいろ応用ができます。

回路図(TC40H000P 使用)

回路図(NE555P 使用)

そういうわけで、あり合わせの部品で試作したのが写真左側の回路です。
(右側は一緒に買ったステッピングモータのテスト回路)
フライバックコンバータを構成していて、
シャントレギュレータとフォトカプラで電圧誤差を一次側にフィードバックすることで
安定化された +5V を出力します。

AC ライン用のラインフィルタは DC 電流を流すことを考えられていないので、
電力トランスとして使うとすぐに飽和してしまいます。
図の回路でおおむね 20-30mA くらいの電流を取ることができます。

SM1350 ブレイクアウト基板

NPC 社の SM1350 という IC があるのですが、パッケージが若干特殊なので
テスト用にブレイクアウト基板を作りました。

回路図 (PDF)

レイアウト(裏面) (表面)

生基板

実装例 (A級アンプモード)

実装例 (BTLモード; 下半分の C は実装不要)

BTL 出力と A級出力の 2 モードに対応しています。
(BTL/A級出力は IC のマスクオプションで決まっています。)
基板にプルアップ抵抗のパターンがないので、
マスクによっては抵抗の配線が必要になるかもしれません。

余りがあるため、ほしい方があれば部品頒布のページを確認のうえご連絡ください。
基板のみ¥100、IC 付き¥800 で頒布します。(送¥84)

追記

A級出力マスクの場合は、スピーカを駆動するために外部アンプが必要です。
LM358 のようなアンプと接続するか、下記のような簡単なアンプを使用して
スピーカに接続してください。

ロジック IC でつくる国鉄気動車チャイム音 (製作編)

前回の回路を作ったものが下記の写真です。
比較的小規模な回路なので、基板1枚に収まります。

国鉄チャイムなので、国鉄時代に製造された IC で統一しました。

ラッピングにするほどでもないので、信号線は基板裏側で配線しています。
この類の配線には銀めっきの単線が便利です。
普通に売っているラッピング用単線は錫めっきなので、長期在庫品は半田付けには向きません。
同じ錫めっきの単線でもメーカによって差があるようで、特にジュンフロン線は半田が乗らない傾向にあるように感じます。
トラブルの元なので、錫めっきのジュンフロン線は半田付け禁止にしています。

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ロジック IC でつくる国鉄気動車チャイム音 (設計編)

国鉄時代の気動車の車内放送で使われていたメロディ(アルプスの牧場)を鳴らす回路を作りました。
マイコンを使ってはつまらないので、例によってロジック IC を組み合わせて作りますが、
せっかくなので国鉄時代(~1987)に製造された IC だけを使って組んでみました。

2 つの 8 ステップ波形生成器とエンベロープ生成器により、
ある程度オルゴールのような音が鳴るようになっています。
長くなってしまったので設計編、製作編で区切ります。

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LM339 によるローコストな 5V -> ±15V DC-DC コンバータ

UA741 など旧世代のアナログ IC を使うときに必要な ±15V の両電源を用意するのは少し面倒です。
単電源 +5V から ±15V に変換できればいいのですが、そういうモジュールは高価だし、スイッチングレギュレータ IC を 2 回路用意するのもあまりスマートに見えません。
2 巻き線トランスを使えば両電源へのコンバータは構成可能ですが、トランスを巻くのが面倒です。
そこで、簡単でローコストな方法として、コンパレータ IC LM339 を使用して両電源 DC-DC コンバータを作ってみました。


(テスト回路; 一部使用していない部品が実装されています)

回路図PDF

回路図のようにどこにでもある部品で構成しており、LM393(テスト回路は NEC uPC393C を使用) 1 個で発振、電圧比較を行っています。
+ 側は、フィードバック電圧が基準電圧 0.6V より大きければ Tr のドライブをやめるように制御しています。
– 側の制御は少し難しいのですが、0V (厳密には LM393 のドライブ段の VCE(sat) )基準電圧と出力 +/- の中点電圧との比較を行うような回路になっています。なお LM393 は入力段が PNP Tr なので -0.5V 程度までの電圧比較が可能です。
専用 IC のように保護回路や Duty 制御は入っておらず、効率もよくありませんがそれなりに安定した電圧が期待でき、+ 側は 30mA 以上、- 側は 20mA 程度まで引くことができます。

動作電圧の低い方は LM393 の動作電圧に依存し、2V くらいから動作可能です。
ただし、動作電圧が変わると発振周波数なども変化するので、定数の調整が必要になります。

SN76477N

以前購入してあった SN76477N (Complex Sound Generator: CSG) のテスト回路を実装しました。

秋月電子の 1.778 x 2.54mm ピッチ基板を使用します。タイミング要素の一部はソケットで実装するようにしています。


1.778mm IC ソケットも秋月電子にあります。店頭に無いので店員さんに 2F から出してきてもらいました。

回路図 (PDF)
ほぼアプリケーションノートの回路例です。

出力サンプル

プロペラ音

UFO音

ガンショット

ノイズフィルタ効果の確認

ロジック IC テスタの製作

2018 年最後の更新となりましたが、最近作ったロジック IC テスタを紹介します。

ジャンクで入手したロジック IC を使用するときには IC テスタがあると便利です。
SSI – MSI で組み合わせ回路を作ると、1 個の製作に数十~数百個の IC を使用することになるので、
万が一不良品が混ざると大変な思いをすることになります。
そこで、IC の動作や各ピンの入出力を確認する、簡単なロジック IC テスタを作りました。
ロジック IC のテスタなので当然ロジック IC を使って作っています。

設計にあたり、以下の項目を条件としました。

  • DIP20, DIP16, DIP14 の IC を試験できること
  • 7473, 7493 など特殊な電源ピン配置の IC も試験できること
  • IC の消費電流がわかること
  • H レベル、L レベル、Hi-Z が区別できること
  • 電源は +3V – +6V くらい

回路図

動作

写真にスイッチの行列が見えますが、このスイッチ操作により IC の各入力ピンのレベルをセットします。
LED には出力ピンの電圧レベルが表示されます。

  • SW1: 電源ピンの配置を選択します。(N/A -> 20P -> 16P -> 14P -> SP)
  • SW2: 全ピンの状態を Hi-Z にリセットします。
  • SW3: 電圧レベルを CMOS レベル / TTL レベルから選択します。
  • SW4: 全ピンのプルアップの有効 / 無効を選択します。

組み込みの電流計により、IC の消費電流をチェックできます。

ピンの出力と電圧検出

上図の点線枠内の回路は、2 ピン毎の出力回路と電圧検出回路を示しています。
ピンの出力は、L レベル、H レベルと Hi-Z をプッシュスイッチにより切り替えられるようになっています。
一度切り替えたレベルはラッチ 4043 により保持します。
出力ドライバは TC7SH125 を使用しています。
MR 信号により全ピンを Hi-Z にリセットするためのものです。

各ピンはコンパレータで L, H レベルを検出し、2 色 LED に表示します。
Hi-Z は LED 消灯で区別できるので、出力段の故障も判断できます。

(74HC373 で、G=H とした例)

20 ピンのテスタを作る場合、回路図に示した回路を 10 個実装する必要があります。

電源回路

74 シリーズ / 4000 シリーズで標準的な DIP20, DIP16, DIP14 の電源配置と、古い TTL MSI の特殊なピン配置に対応するよう、電源セレクタを組んでいます。
電源ピン配置は SW1 を押すごとに切り替わります。

DIP20 (LED 赤: VCC, 緑: GND)
DIP16
DIP14
特殊ピン配置 (7473 など)

基本的には IC を右側に揃えて挿入します。

特殊ピン配置のとき、74 シリーズの DIP14 の電源ピンはバリエーションが存在するので、IC によって挿入位置が変わります。


7490 – 7493: 右 1 列を空けて挿入


7441, 7473, 7475-78 (74H78 以外), 7481-7484, 7494, 74L95, 7496, 74H103, 74H106, 74141: 右に揃えて挿入

基板

実装が大変なので、回路図中点線で囲った部分は基板を起こしました。
基板中にユニバーサル領域を設けたので、うまく作ればすべての回路をこの基板上に載せることができます。

(2 枚 1 組で使用)

基板は予備があるので、作ってみたい方には頒布します (基板のみ 2 枚 ¥500、主要部品とセットで¥2,500[24/9/9追記]要相談) 。

電流計

適当な電圧計を接続できます (100mA/V) が、秋月で販売している「超小型2線式LEDデジタル電圧計」を改造して使うのが便利です。

改造箇所

以前のテスタ

回路図に v2 とありますが、もっと以前に作った v1 も存在します。

フィルムコンデンサの種類と使い分け

一般的に、アナログ回路などでコンデンサの特性が回路上重要になる場合、100pF – 100nF 程度の容量値ではセラミックコンデンサではなくフィルムコンデンサを使用します。回路図上ではコメントで表記したり、値に「*」記号を付加して区別したりします。たとえば私の書いた回路図では、下図のようになっています。

例1:半導体カーブトレーサ(未公開)

例2:ミリオーム計

赤枠で囲ったコンデンサはその特性が重要になるのでフィルムコンデンサ指定です。とくに例1の積分コンデンサにはポリプロピレンコンデンサを指定しています。ミリオーム計ではこの点について質問をいただきましたので、説明が必要でしたね。

なおフィルムコンデンサを種類指定で購入する場合、そこらの小売店だと型番、種類が曖昧で販売していることがあるので、信頼できる店で購入することが望ましいです。たとえばポリプロピレンフィルムコンデンサ指定で探す場合などは RS コンポーネンツで購入するといいと思います。

で、フィルムコンデンサといってもいろいろありますので、当記事では各コンデンサの特徴と損失係数 D をみていきます。

損失係数 D とは

(適当なイメージ図)

損失係数はひとことで言うと、コンデンサのコンデンサ成分とよけいな成分の割合です。理想的なコンデンサは損失 0 ですが、実際は ESR (等価直列抵抗) に代表されるような損失があります。これは、コンデンサに AC 電圧を付加したときの電流の位相(理想は90°)としてみることができます。上図のように、両成分の割合=90°からの位相差 δ の正接 (tanδ) をとったものが D です。したがって理想的なコンデンサであれば D=tanδ=0 となり、これが高いほど波形ひずみや。フィルムコンデンサのカタログでは D の % 表示、電解コンデンサのカタログでは tanδ で表記することが多いです。なお D は LC メータで計測できます。

誘電体吸収とは


コンデンサに電荷の溜まった状態で両端子を短絡させると、当然端子間の電位差は 0V となります。ところがこの状態から端子間を開放して少し経つと両端子間に電位差が現れます。このような現象を誘電体吸収といいます。誘電体吸収は損失係数とは無関係で、誘電体の材質により現象の起こりやすさが変わります。
実際に誘電体吸収を観測しようとすると少し大変(シールドをしっかりして、J-FET 入力 OPAMP を使えば可能だと思います)なので、別の機会にゆずります。

いろんなフィルムコンデンサ

手元にあったコンデンサをみていきます。どうもパ行が多くややこしいので、文中では PET コンデンサ、PP コンデンサ、PS コンデンサなどと略すことにします。

PET: ポリエチレンフィルムコンデンサ(ポリエステルフィルムコンデンサ)

金属箔とPET (ポリエチレンテレフタレート) フィルムを巻いたもので、フィルムコンデンサの中でも一番安価で、一般的に使われます。おおむね耐圧 50-200V 程度で、100pF – 1uF 程度の容量値の製品が手に入ります。マイラコンデンサと呼ばれることがありますが同じものです。温度係数>0。

メーカによって黄色や白の透明外装だったり、茶色かったり、ガムのような形状だったりしますが、最近のものであれば性能はどれも変わりありません。

 
 

写真のように、いずれも D = 0.003 程度を示します。セラミックコンデンサ (D=0.008 – 0.05) や電解コンデンサと比較するととても低い値であり、大抵のアナログ回路にはこれで十分です。フィルムを巻いている関係で高周波回路に向かない点と、誘電体吸収が若干ある点に注意が必要です。良い特性を要求される積分コンデンサにはあまり向きません。(INL 0.1% 程度悪化します)

M-PET: メタライズドポリエチレンフィルムコンデンサ

ポリエチレンコンデンサの高耐圧版で、1kV 程度までの製品があります。また、自己回復作用(いったん短絡しても、電源を入れなおすと回復する)を持ちます。それ以外の性能はポリエチレンコンデンサとほとんど同じです。上記コンデンサを積層型にしたものもあり、同容量・同耐圧ならば小型になります。いろんな形状があります。


      

D=0.3% – 0.5% と、実測上、通常の PET コンデンサよりも高い損失係数を示す傾向にあります。一番右側は DF コンデンサで、-55/+125℃範囲品です。

PP: ポリプロピレンフィルムコンデンサ

PET のかわりに PP (ポリプロピレン) を使用したもので、高耐圧コンデンサとしてポピュラですが、それ以上にコンデンサとしての性能が優れています。そのかわりにやや高価です。おおむね、ポリエチレンコンデンサと同様の容量範囲の製品が入手可能です。温度係数<0。

左側の製品のように、見た目からは PET コンデンサと区別することは難しいです。

写真のように D=0.000 と非常に低い値を示すので、ここで PET との違いを判断できます。PP コンデンサは誘電体吸収もほとんど示しません。これらの特性から計測器の(とくに 積分型 ADC の)積分コンデンサに最適です。D=0 ということから AC を流してもほとんど発熱しませんので、高電圧 AC のカップリング、分圧コンデンサとしても適しています。
一番左のは巨大なコンデンサですが、強電になると損失による発熱が無視できないわけで、損失の少ない PP コンデンサが使われます。

PS: ポリスチレンフィルムコンデンサ

日本ではスチロールコンデンサ、スチコンと呼ばれることがほとんどですが、要するにポリスチレンを巻いたコンデンサです。コンデンサとしての性能は優れていますが、耐圧がポリプロピレンコンデンサほど高くないことと、誘電体吸収は PET コンデンサよりも少し大きいようです。高い容量の製品はなく、100p – 10nF くらいが一般的な容量レンジです。また、熱に弱いため半田付けの際は注意が必要です。またこの性質のため SMD 化は不可能であり、古くからあるコンデンサですが、いまや絶滅危惧種です。温度係数<0。


D=0.000 と測定限界以下です。すばらしい。右側のは NEC の50年前のコンデンサです。

PET-PP: ポリエチレン・ポリプロピレンコンデンサ

フィルムコンデンサを使用して時定数回路を作ると温度による変化が問題となります。ポリエチレンコンデンサは温度係数>0、ポリプロピレンコンデンサは温度係数<0 です。そこで、ポリエチレン、ポリプロピレンの両方を使用して、温度係数を常温で 0 に近づけたものがこのコンデンサです。これを使えば、抵抗側で温度係数の補償をすることなく、広い温度範囲で比較的安定な発振器やタイマ回路を作ることができます。しかしながら、今は PEN (ポリエチレンナフタレート) コンデンサに置き換わってしまい、絶滅危惧種です。


上写真は日精 AWS シリーズ(現行品ではない?)ですが、D =0.2% なのでちょうどポリエチレン、ポリプロピレンの中間になっています。

まとめると

  • 損失係数でみると、ポリプロピレン (PP) コンデンサ>ポリスチレン (PS) コンデンサ>ポリエチレン (PET) コンデンサ>メタライズドポリエチレンコンデンサの順で良好。
  • 積分コンデンサなど性能が重要なコンデンサには、PP コンデンサを使用すべし。
  • PP コンデンサと PET コンデンサは損失係数の測定で判別可能。
    • 見た目で区別できないので、測定機器がない場合には信頼できる店で購入。
  • PET コンデンサの見た目で性能に違いはなさそう。