自作カーブトレーサ[UDAS-01]で半導体の特性を見る その2

前回からの変更点
・NPN/PNP Tr の測定に対応
・3 段階の測定レンジ・計測精度の向上
・IB-VBE 図の追加

以下、いくつかの Tr で測定したグラフを示します。

  • 2SC1815(GR)

IC-hFE

graph_2sc1815_01

上図は 3 段階 (IB<4uA, 70uA, 800uA) に分けてトレースしたものを重ねています。やはり IC>60 mA で hFE が落ち込んでいます。繰り返しになりますが、DCA75 のようなアナライザでは IC を 100mA まで取れないので、こういう特性はわかりません。

graph_2sc1815_02

2SC1815 のデータシートのように、同じグラフを log-log で表示したものです。低 IB から高 IB までしっかり計測できていることがわかります。さすがに、データシートに「直流電流増幅率の電流依存性が優れています」とあるように、IB<60mA では非常にフラットです。

IB-VBE

graph_2sc1815_03

上図は IB-VBE (エミッタ接地 VCE=5V) です。配線抵抗と Tc (パルス計測でないため) の影響があるので、高 IC となる範囲は少し誤差があると思います。

逆接続時 IC-hFE

graph_2sc1815_inv_01

バイポーラ Tr はエミッタとコレクタを逆にしても NPN あるいは PNP 構造となるので、幾許かの増幅作用が期待できます。エミッタとコレクタを逆に接続して直流電流増幅率をトレースしたのが上図で、センシング抵抗がレンジとマッチしないのでギザギザしていますが、hFE < 10 と極めて少ないながらも一応の増幅作用は確認できます。またこの増幅率も IC に非常に依存するものとなっています。この逆方向増幅率はほとんどの Tr のデータシートには規定されていないので、これは貴重なグラフといえます。

  • 2SA1015(Y)

2SC1815 のコンプリ、2SA1015 の Y ランクを見てみます。

IC-hFE

graph_2sa1015_02

上図は IC-hFE のグラフです。2SC1815 と同様に hFE は広い範囲でフラットですが、高 IC 時の落ち込みは少ないようです。Y ランクと GR ランクとの違いでしょうか。

IB-VBE

graph_2sa1015_03

2SC1815 と傾向が異なるように見えます。

  • 2SB270

Dscf0736

ゲルマニウムトランジスタの特性を見てみたいと思います。2SB270 は三洋の小信号用 PNP ゲルマニウム Tr です。ジャンクで手に入れたものなので、新品と比べて劣化があるかもしれません。なぜだかスリーブの色にバリエーションがありますが、今回は青色のものを使用しています。

IC-hFE (補正前)

graph_2sb270_no_correction

上図は上記とまったく同じ条件でトレースしたものですが、明らかに IC が小さい範囲でおかしく見えます。一般にゲルマニウム Tr は漏れ電流 (ここで影響するのは ICBO) がシリコン Tr と比較して数桁大きいので、この影響で見た目の hFE が大きく見えています。2SB270 のデータシートによると、ICBO < 12uA @ 6V となっています。今回のサンプルでは実測で ICBO = 3.2 uA でした。この ICBO の影響を補正したものが下図です。

IC-hFE(補正後)

graph_2sb270_01

graph_2sb270_02

Ge. Tr としては高めの hFE です。一方で hFE の IC 依存性が見られます。

IB-VBE

graph_2sb270_03

ゲルマニウム半導体の特徴として低い順方向電圧が挙げられます。当然ながら Ge. Tr の VBE の値も Si. Tr と比較して小さくなっています。

 

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