タケダ理研 TR-6364 (ニキシー管マルチメータ) その2

前回の続きです。


古い(1970年代前半)デジタルマルチメータを入手しました。
調整の必要があるので、やむなく内部を開けて見ます。
もっともこういう古い計測器は非常に興味深いので、
調整の必要がなくとも中を見ていたと思います。

上部のねじを外すことにより、簡単に内部を確認することが出来ます。
大きく 2 枚の基板から構成されています。
上側基板
下側基板

機能の割りに回路規模が非常に大きいです。
B 級(0.1%)~D 級(0.5%)の金属皮膜抵抗が多く見えます。
また、部品定格などを見る限り、計測器らしい堅牢な設計になっているようです。

困ったことに、調整箇所(トリマ)が予想以上に多いです。
説明書も何もないので、正しい調整を行うためには、
ちゃんと回路構成を追う必要がありそうです(ちょっとうれしい)。
でも両面基板なので、やや大変かも。

レンジ切り替えロジック
ロジック IC は電池動作を考慮したものでしょうか、ナショセミの 74L ファミリを使用しています。
(ただし74141 のみ標準 TTL。)
74L は 74H と並んで今はまず見かけない 74 シリーズの TTL です。

MOSTEK MK5007P
心臓部 ADC は予想通り、”準”ディスクリート構成と呼ぶべき、カウンタ IC による積分型をとっています。
このカウンタ IC(MK5007P) と 74141 のみ、何故か IC ソケットを使っています。
故障しやすい部品なのでしょうか。

IC のデートコードを見る限り、本製品は 1973 年以降に製造されたもののようです。
当時はすでに LED も VFD もあったはずなのですが、どうしてニキシー管を採用したのでしょうか・・・?

次回は回路構成を詳しく見ていきます。

タケダ理研 TR-6364 (ニキシー管マルチメータ) その1


先日、外見に一目惚れをして入手しました。
ニキシー管ディスプレイのマルチメータです。
私のセンスではとてもカッコいいと感じます。
また、このサイズで “MINI-MULTIMETER” を名乗るあたりがいじらしいです。
こんな外観ですが、なんと電池動作が可能です。(UM-2 x10)

ジャンクという説明でしたが、いくつか調整が必要なことを除いて、
機能はほぼ OK でした。
40 年前の製品としてはけっこう状態が良いです。
あまり使われてこなかったのではないでしょうか?

上面
側面
背面

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チャージポンプ回路の応用

MC34063A (Motorola) などの DC-DC コンバータのコントローラ IC の中には、最低動作電圧が 2.5V ないし 3V 以上というものも多く存在します。アルカリ乾電池や NiMH 充電池の終止電圧はおおむね 0.9V ですから、乾電池 2 本で長時間これらの IC を動作させることはできず、設計時にもどかしい思いをすることになります。

MP1541DJ (MPS) もそのような DC-DC コンバータ IC の一つです。可変出力電圧で電流制御型の高性能な昇圧コンバータなのですが、2.3V で UVLO(Under Voltage Lock-Out) が働くため、どうあがいてもそれ以下の電圧で動作させることは出来ません。


MP1541外観 (SOT23)


典型回路

この IC は IN 端子から動作電圧を取り、消費電流も 1mA 以下です。そこで、IN 端子のみチャージポンプによる昇圧回路を挟めば、十分に低電圧動作が可能です。もっとも、手持ちが多いなどのアマチュア的理由がなければ、MCP1640(Microchip) のような低電圧動作の IC を採用すべきですが…。

というわけで、LED ドライバを組んでみました。電流フィードバック電圧 (1.25V) が比較的高く、その分がロスとなるので効率はそれほど取れないと思います。とはいえ引き出しにあるもので作れるメリットは大きいです。

適当なユニバーサル基板へ実装しました。LED はジャンク袋に入っていた、たぶん日亜のサイドビュー型です。

思惑通り、1.8V 動作もクリアです。

¥30 チャージポンプ回路

電流はいらないけど、圧電素子駆動用にちょっと高電圧が欲しいとか、
3V から動作の SW レギュレータを 2V から動かしたいとか、
そういう用途に最適なチャージポンプ回路です。

(回路図)

入力 1.8~6Vで動作するので、乾電池 2 本動作の機器に最適です。
出力電圧はだいたい (入力電圧 – Vf)×2 で、電流は 2 mA 程度まで取れます。表面実装部品を使えば¥30~¥50 程度の部品代で製作できます。

TC7W14(F) は 3回路入りシュミットトリガインバータですが、
発振回路を組みやすいピン配置なのでこういう用途にも好都合です。

(製作例)

ロジックICコレクション

引き出しにあるロジックIC(7400, 4000, 4500シリーズ)の写真をとって
メーカごとに一覧にするページを作ってみました。
The “Face” of Logic ICs」というタイトルです。
数千個のロジック IC から選抜しています。

たいして珍しいものは所有していないのですが、
こうして製造元別に見ると、いささかコレクションらしく見えてきますね。
こんなのとか、
こんなのとか、それなりに古いものもあります。

今日の買い物@14/08/22

☆aitendo 実店舗

全品1割引、セール品あり。
ここは行くたび配置が変わっています。
夏休みにも関わらず、来店客の年齢層は他のパーツショップより高め…。

値段はだいたい。

・ICクリップつきケーブル 20P x1 ¥570
ケーブルとクリップの色が異なることに我慢できればお買い得。

・ソケットつきケーブル x1 ¥280

・ソケットつきケーブル x1 ¥100

・PLCC32-DIP32 変換 x1 ¥395来るたびに探していたもの。やっと見つかった。

・バーアンテナ x2 ¥200長いものと短いものがありました。

・HD14562P x2
・TC4017BP x2
CMOS ロジックがいくつか売っていました。

・9月いっぱい、新店舗で使える割引券をもらいました。

☆そのほか

デッドストックの TTL ロジックをいくつか。

今日の買い物@14/08/19

日米にて、ICレールが投売り状態。
めぼしい物はすでに買ってしまったので、型番のみで購入

・SN74LS273N (TI) x18 ¥108
 Quad D-FFs

・M54519P (三菱) x25 ¥108
 7ch Darlington Tr Array

・10149A (Signetics) x25 ¥108
 ECL PROM(モトローラ MECL 10,000 )
– 完全に読み間違い。値札が「TL10149A」となってたせいで、何かのアナログICだとばかり・・・。
というか Signetics も ECL 作ってたのですね。

大したものは残ってないけど、日立の u-Law CODEC はまだありました。

・スピーカ、スペーサほか ¥324

・LM95221CIMM (NS) x5 ¥53
– 温度センサ

・MCH6412 (SANYO) x10 ¥53
– N-ch MOSFET 30V 5A 27mΩ

* 実は74VHC573 を買いに行ったのですが、これは売り切れのよう…。

最近はモトローラ製 MECL とか 日立 HD2500 シリーズとか、
いにしえの IC がよく転がり込んで来ます。
半世紀前の IC となると、もはや蒐集の対象ですね。

AVR vs PIC

まあ、日本では 8bit MCU は PIC の方が人気なようで、
私のウェブ・ページでももらう質問は PIC のものばかりでちょっと悲しい。
ホビーで使うなら、AVR のほうが圧倒的に使いやすいと思います。

8bit の AVR と PIC について、個人的な感想を少し書いておきます。
#大学や高専のレポートに使ってもかまいませんが、事前にコメント欄から連絡すること。

☆PIC の欠点

・ペリフェラルがだめ。

ローエンドのMCUの周辺機能はだいたい単機能で、
ちょっと凝った応用を考えると破綻する。
また、1つの品種の周辺機能を覚えたところで、
他の品種の周辺機能は全然構成が異なるので、
また1から覚えなおし。

AVR はローエンドからハイエンドまで、
ほぼ同じモジュールが組み込まれており、開発がとても楽。
また、それぞれのペリフェラルはよくできていて、
いろいろな用途に対応できる。

汎用 I/O ひとつ取ってみても、PIC では、
やれこのピンはプルアップが使えないだの、
このピンはシュミットトリガじゃないだのと、しばしば問題にあたりますが、AVR ではそのようなことはまずありません。

・データシートが見づらい。

レジスタ確認するために、あっちこっちのページを見なきゃいけない。
開発に時間がかかるひとつの要因。

・MPLAB X がだめ。

動作遅い、メモリ大食い。

・Cコンパイラの最適化オプションが有料。

AVR は GCC が使えてよいです。
最適化が使えないってことは、AVR の ROM 1kワード は
PIC の ROM 1.8kワード に匹敵するってことですからね!
これを考慮してコスト・パフォーマンスを議論すべき。

・無駄に多品種。

PIC の多品種っぷりを誇る人がいますが、これはナンセンス。
1つの品種でカバーできる範囲が狭いってことだからね。

☆AVR の欠点

ISP がクロック依存。

クロックを与えなければ In-circuit のプログラミングができない。
慣れていないと、ヒューズビットでクロックソース設定を間違えて、
プログラミングができなくなってしまうことも。

・入手性が悪い。

SOP の AVR だったり、USB 対応品を手に入れようと思っても、
秋葉原にはほとんどありません。

・内蔵発振器の周波数が低い。

だいたいの AVR では、内蔵発振器は最高でも 8MHz です。これは PIC の 32MHz 相当とはいえ、あと 2倍ほしいケースも。

・ペリフェラルの種類が少ない。

DAC とか USB とか PGA とか、凝った周辺機能をもつ品種は多くありません。
まあ大抵の場合、汎用の周辺機能が強力なので、
あとはプログラマの ”工夫” で何とかなるのですが。

☆アーキテクチャについて

Cなどの高級言語を使う限りは、アーキテクチャはそれほど議論の対象にならないと思います。
確かに PIC では、たとえば汎用レジスタが少なかったり、
レジスタ・RAM アクセスにバンク操作が必要だったりして、
その理解は実に面倒ですが、これらはむしろ些細な問題といえます。

アーキテクチャを議論する上でのポイントは 3 つ。

(1)命令サイクル / クロック周波数

PIC も AVR も、アーキテクチャとしては同じ 2段パイプライン動作です。
AVR はクロック周波数をそのまま内部クロックとして与えられるため、
クロック周波数はそのまま命令サイクルとなります。
いっぽう PIC は前置分周器で 4 分周しているため、
命令サイクルは クロック周波数 ÷ 4 になります。

以前どこかの雑誌で、クロック周波数が 32kHz のときの消費電流の比較をもって、
PIC と AVR の消費電力を比較していたのを見たことがあります。
これではナンセンスどころか、全く誤った比較です。

(2)スタックの扱い

サブルーチン呼び出しや割り込みのときに、プログラムカウンタ(PC)や
データを保持する機構がスタックです。
PIC ではスタックは PC スタックのみで、
段数固定のハードウェアによるインプリメンテーションです。
これはハードウェアの規模は少なくて済むのですが、ちょっと原始的ですね。
POP も PUSH もありません。

一方 AVR では、たとえ 8ピンの ATtiny13A のようなローエンドであっても、
スタックポインタによるスタック呼び出しや POP/PUSH をサポートしています。
(90S1200 を除く)

(3)割り込みの扱い

ローエンド PIC ではそもそも割り込みの概念がなかったり、
割り込みルーチンは 1 つか 2 つで、ソフトウェアによる条件分岐と
手動での割り込みフラグ解除が必要です。
PIC では、割り込みは必要最小限のハードウェアになっています。

一方 AVR では、たとえ 8ピンの ATtiny13A のようなローエンドであっても、
割り込みベクタやフラグ自動解除機構は当たり前にサポートしており、
多重割り込みも簡単に実現できます。
しかし、AVR では優先度付き割り込みをサポートしていないので、
(PIC の一部では簡単ながらサポート)
場合によっては問題となるかもしれません。

☆まとめ

個人的な感想としては、PIC はコスト重視、AVR は使いやすさ重視の MCU という印象です。
量産で設計するならいざしらず、しろうとの趣味程度の数では、
PIC のわかりづらいデータシートを見ながら使いづらいペリフェラルと格闘するならば、
20-30 円高くても AVR を使った方が 数時間、場合によっては数十時間も
開発の苦労が減らせると思います。

今日のパーツ:ATtiny2313A (ATMEL)

ATMEL の AVR の中でも、ATtiny2313A は頻繁に使う IC のひとつです。
ATtiny2313A は ATtiny2313 の改良版で、バイナリレベルで上位互換になっています。

使いやすい IC なので、レールで買ってしまいました。
秋葉原では手に入れづらい、1.27mm ピッチの SOP 品です。
値段は 1つ ¥100 強といったところ。

主なスペック

FLASH: 2kB (1kW)
SRAM: 128B
EEPROM: 128B
Vdd: 1.8 – 5.5V
fclk: 20MHz@5V, 10MHz@2.7V, 4MHz@1.8V

ATtiny2313 と ATtiny2313A の相違点

ペリフェラル機能に大きな変化はありませんが、細かい違いはあります。
相違点の詳細は AVR533 にもありますが、
個人的に気になったところを以下に記述します。

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PIC12F675に書き込めない?

簡単な制御のために、めったに使わない PIC(12F675)で回路の設計を行いました。

主電源の切断後 EEPROM にデータをセーブさせるため、
ダイオードと 100uF のキャパシタにより、マイコン電源のブラウンアウト時間を遅らせています。

回路はこんな感じ。

PICKit3 を使って ICSP での FW 書き込み時に問題が。
1回目は書き込みできるのですが、2回目以降は Verify に失敗・・・。
Erase しても フラッシュROM の内容は変わりません。

なぜでしょうか。
PIC12F675 の電源電圧範囲は 2-5.5 V だから、問題ないはず…。
データシートにもプログラミング時の制約の記載はないし。

答えはデータシートではなく、「Programming Specifications」にありました。

(PIC12F629/675/PIC16F630/676 EEPROM Memory Programming Specification より)
これによると、このチップでは、4.5 V 未満の VDD での FLASH 書き込み・イレースが
保証されていません。
実際、上記回路ではおよそ VDD = 4.3 V になります。


(参考:PICKit 3 Help より)

本当かなと思い、5.0 V 電源で確認すると、確かに書き込みが正常に行われました。

 
というわけで、回路をこのように変更してOKです。